100のお題  091:サイレン

サイレン


剣を杖に、身を支え。
存分に動きもしない足を動かし。吐息も凍らせる山を力なく踏みしめる。
痛みはとうに解らない。傷の持つ熱すらもう感じない。
何気に掌を見れば。
あの男の大きな手を思い出した。そんな余裕などどこにも無いのに、笑みがこぼれた。



目の前でむざと死なせてしまった大切な人たち。
『生きる』と約束したのに、今自分は死に向かい合っている。
せめて、いま出来る約束を護らなくては    。
一つは敬愛する召喚士の娘をビサイドへ連れて行くこと。
二つ目は・・・・。
・・・の息子を護りに行かなくては・・・。




そして    。
自らの肉体が死んでいくのを冷静に自分で見詰た。
死して急速に熱を失っていく肉。
血に汚れた体は最期の涙を流したのか。薄汚れた跡があるようにも見え。



幻光虫で構成されたこの体には熱はあるのだろうか。



ただ一人、途方に暮れていれば。
未だ幼さの抜けない少年に出会った。
少年は死して尚、この身を動かそうとする俺の姿に信頼を置いてくれた。
自らもその純朴な人柄を信頼し。
ロンゾの少年に敬愛する召喚士の娘を任せた。
彼ならばきっと約束を果たしてくれる。



人を信じることを忘れていた自分が。
ここまで来て人を信じれるのは・・・誰のお陰なんだろう。




そして一人。
再び極寒の山を目指した。
そこに行けば。
もう一度、失われた・・・に出会える気がして。
もう時間は気にならない。
逢えるその時まで。
待とう。



体を失くしたこの半端な器に、世界は理屈を教えてくれる。
目を閉じ、ただ享受すれば望む知識を与えてくれた。
世界。
召喚士。
エボン。
究極召喚獣。
・・・その成れの果て。


ああ。
貴方も、・・・も。
無駄にその命を散らしてしまったのか・・・?
世界を知れば知るほどに。
貴方達の死はスピラに小さじひと掬いの希望を与え。
スピラを覆い尽くすほどの絶望を与えるんだ。








そして。
世界を喰らい尽くす巨大な絶望は。
一年を待たずして復活し。
その巨体を俺が佇む山の頂上に見せた。



俺が此処にいることが分かったのか?



・・・ジェクト。









この世界の些細な平和が終わりを告げる。



警告を鳴らして。






end






時代が変わる時。それを告げる警鐘は、彼の耳に一体どんな音で・・・

こちらも 「アーロン視点で」 と 【CRYSTAL WIND】 安藤蒼師様にお願いしたものです。
最後の最後まで名を呼ばない(呼べない)アーロン。
ああもうアンタほど不器用で深い愛を隠し持ってる男を、私は他に知りませんよ!

ゲーム中でユウナが 「何物にも代えられない大切な」 時間を生み出す事、
それを無駄だなんて言わないで、と言っていましたが、それでも。
『一年を待たずして復活し』
散らせた命の代償がこんな短い期間だなんて・・・やっぱり厳しいですよね。
召喚士御一行の偉大さを再確認出来た一文でした。

そして今気付いたんだけど、蒼師さん・・・・・
『アーロンの辛い話』 リクばっかですみません! ><
私ってヤツは、
泣きそうになってるアーロンを見て泣くのが好き
という、些か問題アリな趣味の持ち主らしく・・・;
泣かせて頂きました。またリクしちゃったらごめんなさいです。
本当にありがとうございました!!(>人<)


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